第7章 アイツは可愛い年下の男の子
それはそうと、私が2年ぶりにこの本丸に帰ってきてから、薬研だけが妙に距離を取っていた。
避けると言うほど露骨ではないが、意識しているのが痛いほど伝わってくる。所謂お年頃、ってやつなのだろう。
同じ粟田口達の中でも、薬研はどこか少し大人びていたし。距離の近さを、無邪気に受け入れられる時期は過ぎている。
が、それだと、霊力の供給が上手くいかなくなってしまう。
どうにかしないと、と思いながら、私は薬研の背中を見ていた。
小さいと思っていた背中が、何故か今日は大きく見えた。それはきっと、この2年という間の中で、彼が成長した……いや、成長せざるを得なくなった原因があるからだ。
恐らくそれは――
「ねえ、薬研」
「今度は何だ?」
「粟田口の中で、一番最初にここを出て行ったのって一兄でしょ?」
「なん――ッ!?」
「やっぱりね……」
彼の背中が大きく見えた。否、大きく見えるようになったのは、彼がそれほど苦労をした証でもある。
恐らくだが、一期一振がいたら彼の重責はそこまで大きくは無かったはずだ。
そして彼は残った。出て行った粟田口の兄弟達が、いつでも戻ってこられるように――。
「薬研……ごめんね」
そう言って、私は薬研の背中に自分の頭を持たせかけた。一瞬だけ薬研の背中がびくっと動いたが、否定するそぶりは見せなかった。
「大将が気にすることねーよ。少なくとも粟田口の中で、大将に見切りをつけて出て行ったヤツは居ないしな」
「本当に?」
「ああ、皆理由は様々だったけど、いつかは本丸に帰ってくるって言って出て行ったぜ」
「じゃあ、皆いつかは戻って来てくれるのかな?」
「ああ。だから体調管理しっかりして、皆が帰って来た時には笑顔で迎え入れてやってくれ」
「うん!!」
その言葉が嬉しくて、私は勢いのあまり薬研を背中からギューッと抱きしめた。途端に薬研が暴れだしたので、さらにきつくとギューッと抱きしめた。
布越しに伝わる薬研の少し低めの体温が、風邪で火照った体に気持ち良い。