第1章 放置プレイはほどほどに
そんな自分に、ちょっとだけ返りたい。そんな気分で再び開けた門の扉(朽ちかけている)を叩いてみると、そこには2年前と全く変わらない姿のこんのすけがいた、と言う訳である。
「それにしても本丸はえらい変わりようだね~、こんのすけは全っ然変わらないのに」
「それはこの本丸が捨てられた本丸だからですよ」
「捨てられた?」
朔夜の言葉に、こんのすけは侮蔑的な視線で答えた。
いくら神霊といえど、人間をここまで見下す事が出来るのかと思うほど、こんのすけの視線には蔑みの色が浮かんでいた。
その目で朔夜を見ながら、こんのすけはコホンと咳払いをした。
「本来、本丸は主あっての場所。その主が不在となれば、徐々に衰退していくのが自然の摂理」
「え~っと、つまり……?」
「貴女がいなくなった所為で、この本丸はこのような姿になったんですよ。本来この本丸は時間遡行軍と戦う為に次元の狭間に作られた要所。各地に点在すれど、2つとない霊験あらたかな場所なんですよ」
「だったら、なんで後任者とかいないの!?」
「先ほども申した通り、この場所は時間遡行軍と戦うための要所。ハッキリ言いますと極秘情報の塊なんです。だから主がそう易々と入れ替われないよう、100以上のセキュリティが掛かってるんですよ」
正直、貴女が今まで誰にも襲われずに無事でいた事が奇跡に近いです。と、こんのすけは付け足した。
つまり朔夜自身も含め、この本丸は敵にとっては格好の御馳走というわけだ。それじゃあ、こんな本丸を守っている皆は今どうしているだろう。
「ねえ、みんなは?そう言えば随分静かだけど?」
いくら夜とはいえ、まさかもうみんな寝ているって事はないだろう。いや、粟田口の小さい子たちは寝ているかもしれないが。
薄暗い廊下を歩きながら、こんのすけはジト目で朔夜の方を振り返った。
「……貴女、私の話しを聞いていました?」
「イエス、ザッツライ!」
「もう一度言います。この本丸は、捨てられたんです!その末路がどうなったか、ご自分の目で見て下さい!!」
「うわあぁっ!!」