第1章 放置プレイはほどほどに
その昔、た○ごっちなる育成ゲームが世間をにぎわせた。
育成というくらいだから、マメにお世話をしていないとストレスが溜まったり、最悪死んでしまうというなんとも世知辛いゲームだ。
さて、どうしてそんな話を冒頭にしたのかというと、例えゲームであれど侮るなかれという教訓を伝えたかったからだ。そしてそれが身に覚えのある現実なら尚の事。
そう、正直言って放置すること約2年、久々に訪れた本丸は――――正しくあばら屋だった。
「おお!見事なお化け屋敷!!」
「お久しぶりのご帰還ですね(ニコッ」
「よっ、こんのすけ!ひさしぶりー」
この本丸に足を一歩踏み入れた瞬間、どこからともなく現れたこんのすけの、どこか心に刺さる笑顔に、東雲朔夜も無敵の笑顔で返した。
カワイイ子ぎつねの姿をしているが、このこんのすけは政府が管理する列記とした神霊だ。もっと分かりやすく言うと神様だ。
何でそんな神様と朔夜が知り合いなのかと言うと、話しは5年前に遡る。
* * *
当時高校生だった東雲朔夜は、そのずば抜けた霊力を政府に買われ、付喪神を駆使して、時代を塗り替えんとする時間遡行軍と戦うよう命を受けた。
その生活は素晴らしいものだった。初めは分からないことだらけだったが、付喪神である刀剣達に支えられ、仲間もどんどん増えて、見る見るうちに本丸はにぎやかになり、家族や友人と離れて暮らしていても寂しさを感じるヒマさえなかった。
――が!今をさかのぼる事2年前、朔夜は進学を理由に本丸を離れた。
だって、だって……いくら政府の人が『審神者になれば将来安泰』だの『給料は国から支給される』だの言ったって、時間が経てば経つほど胡散臭く聞こえるんだもん!
そんなおいしい話に裏がないわけがないじゃない!
そう思って、朔夜は社会人という堅実(真っ当)な人生を送ることを選んだ。
それなのに、どうしてまた来てしまったんだろう。それは朔夜自身も分からなかった。
だが強いて言うなら成人式の帰り道、みんなとお酒を飲んでちょっと良い気分になった反面、何と言うか、こう……何も考えず、皆と賑やかに暮らしていた頃の自分が、懐かしくなってしまったからだろう。