第3章 おねショタ祭り解禁です!!
それは真夜中の事だった。寝ている自分の横で、何かがごそごそ動くのを感じ、今剣は目を覚ました。
何が動いているのかは、夜の闇の中でもすぐに分かった。2年ぶりにこの本丸に帰って来てくれた、主の東雲朔夜だ。寝付けないのか、朔夜は何度も寝返りを打っている。
「どうしたのですか、あるじさま。ねむれないのですか?」
「ああ、ごめんね今剣ちゃん。起こしちゃった?」
「きにしないでください。ねれないよるは、だれにでもありますから」
例え夜中に起こされたとしても、今剣は嫌な顔一つしなかった。それどころか、朔夜に久々に会えた上に、同じ布団で寝られて、嬉しくて先ほどまで自分の方がウキウキして寝付けなかったほどだ。
「ねえあるじさま。いやじゃなければ、すこしだけおはなししませんか?」
「うん、良いよ。何を話そうか?」
「あるじさまは、どうしてほんまるにかえってきてくれたんですか?」
それは今剣の純粋な質問だった。他の者なら、朔夜の事情を勝手に推測して、絶対にこんな事は訊かないだろう。
朔夜は一瞬、どう説明しようか迷った。だが純粋さの塊を前にして、己を良く見せようと嘘をつくことが出来なかった。
「ごめんね、それは……私にも分からないんだ」
「あるじさまじしんにも、わからないんですか?」
「うん、でも今日……成人式があってね。昔の友達と会って、色々な話をして……その時、急に皆の顔が見たくなって――」
「ぼくのかおもですか?」
「うん、今剣ちゃんにも、すっごく会いたかったよ」
それを聞いて、今剣は嬉しくなった。だがそんな今剣の横で、朔夜は自分のエゴの為、本丸の皆を振り回していると言う事実に心が痛くなった。
――本当はこんな笑顔を向けられるほど、自分は尊い人間ではない。
それでも、今剣は嬉しそうに笑ってくれる。細く冷たくなった体で、ずっと自分が帰ってくるのを待ってくれていた。
その心に応えるなら、きっと今だろう。