第5章 夏休み
「あかん。全然分からん…‼︎いや、何が分からないのかも分からん。」
静かな図書室に治君の悲痛な声が響く
『・・・じゃあ最初のページからやってみる?』
「お願いします〜せんせ〜」
眉を下げ縋りつくような目をされたら無碍には出来ない
ーーーこれは基礎から教えないとなかなか厳しいかも。
教科書の最初のページを開き出来るだけゆっくりポイントを教えていくことにした
しばらく進んだところで視線を感じ、ふと顔を上げると治君と目が合った
『・・・?分からない?』
首を傾けると治君はペンを回しながら「いや、、」と言葉を濁した
「ホンマは1人で勉強したかったんやろなぁ思て。いつもここで放課後勉強してんのやろ?」
『そうだけど…。』
実際、今日もいつものように図書室に向かおうとした
教室を出ようとした時、治君に勉強を教えて欲しいと声を掛けられたのだ。
どうやらバレー部ではテストで赤点を取ると補修を受け終わるまで練習に参加出来ないらしい
けどそれより怖いのはある先輩からの説教なんだと切に訴えてきた。
治君はあえて名前を出さなかったけど、多分信ちゃんの事だろうなと分かり苦笑いを浮かべ了承した
『誰かに教える事も自分の勉強になるから、気にしなくて大丈夫だよ』
「そんな優しい言葉掛けてくれんのだけや。角名や銀島に頼んだら冷たいもんやったで?」
『確か…バレー部の?』
「あの2人はそれなりに成績良いからな。やばいのは俺とツムやなぁ…」
そう話すと机に突っ伏してしまった