第1章 はじまり
和菓子も洋菓子もスナック菓子も好きだけど、信ちゃんのお婆ちゃんが作るおはぎは格別だ
朝から稲刈りをする私達の為にお婆ちゃんが丹精込めて作ってくれた
出来たてホクホクのおはぎを口いっぱいに頬張っていると、
「ちゃんは高校どこ行くかもう決めた?」
おばさんがすでに空になっていた私の紙コップを手に取ると、麦茶を注ぎながら聞いてきた
『えっとー、、、稲荷崎、受けるつもりです。』
チラッと信ちゃんを盗み見して小さく答える
「あら!信介聞いた?ちゃんも稲荷崎やて!あんたしっかり勉強みてあげなあかんよ?」
「いや、俺が教えんでもは勉強出来るさかい心配ない。
大丈夫や。」
な?とアイコンタクトを送ってくる信ちゃんにとりあえず苦笑いを浮かべてみる
受験に"大丈夫"は無いけど信ちゃんが大丈夫と言えば大丈夫な気がしてしまう。
「稲荷崎高校は部活動が盛んやからね、信介はバレー一筋やけどちゃんは何部入るん?吹奏楽とかも有名らしいで?」
「まだ入ってもないのに気が早すぎひん?」
冷静な信ちゃんのツッコミなどお構いなしにおばさんが聞いてくる
『えっと、、、』
正直、入学した後の事は何も考えてない。
やりたい事もないし、とりあえず信ちゃんと同じ高校に行きたくて稲荷崎を選んだのだから、、、
『まだ、、、決めてないです。』
「そうなん?ほなバレー部のマネージャーやったらええやん!なぁ?信介。」
・・・・マネージャー、、、⁇
そうか、その手があった‼︎
思わず目を見開き信ちゃんに期待の目を向けた
ーーーーーけど、
「うちはマネージャーとっとらんし。基本自分らで身の回りの事も全部やるからマネは必要ないしな。」
バッサリと切り捨てられてしまった。
・・・・うん、マネージャーは諦めよう。
少しだけ肩を落とした私を気遣ってか、お婆ちゃんがおはぎのおかわりを差し出してくれた。
それから数ヶ月ーー
私は晴れて稲荷崎高校へと入学した