第4章 オリエンテーション合宿
「痛っ、、」
『えっ?』
視線を向けると包丁を持っていた手と反対、治君の左の人差し指に血が僅かに滲んでいた
『ちょっ、血が⁈』
「切ってもうた。でも全然浅いし舐めときゃ治るし、」
『だっ、、だめっ‼︎』
慌てて手首を掴んだ
私の咄嗟の行動に治君は目を見開き固まっている
『舐めたら菌が入るでしょう?
傷、浅いかもしれないけどとりあえず水で洗って下さい…』
「お、、おん。」
『洗ったら手当てします。私救急セット持ってるんで。』
治君の手を解放し、急いでリュックを取りに行く。
救急セット、持って来てよかった…!
人一倍大きなリュックから救急セットを取り出していると傷口を洗い終わったのか、治君が手元を覗いて来た。
「荷物えらい重そうやなとは思ってたけど、そんなん持ち歩いてたんか。」
『一応何かあった時の為にと思って…』
そう言いながら振り向くと、治君は手をブラブラとさせ濡れた手を乾かしていた
ーーーあっ、、血が、、、‼︎
傷口から血が滲み始めているのが目に入り、慌ててポケットからハンカチを取り出しそっと傷口にあてる。
『いきなりすいません…。でもまだ使ってないんで清潔だと思います…』
「いや、俺はええけど…ハンカチの方が汚れてまうやん。血ついたらなかなからとれへんのとちゃう?」
『ハンカチより今は手当ての方が大事なんで…
バレーボールする人が指怪我したら大変です。』
そう言ながら消毒をし手早く絆創膏で止血する。
ーーーー信ちゃんを見てきたから知っている。
身体のコンディションはもちろん、指の手入れの大事さも。
信ちゃんは指の手入れを毎日欠かしてなかった。
どんなに忙しくても疲れていても、、、
きっとバレーボール選手にとって指はそれ程大切だって事だ
よし、これでいいかな?
手当てが終わりふと黙りこんでいる治君を見上げると、思いの他至近距離に顔がありバッチリ目が合った
「なぁ今、手当てしながら誰の事考えてたん?」
『・・・・え?』
「当ててみよか?」
吸い込まれそうな程綺麗な瞳がじっと私を捉える
その瞳は何か魔力でも持っているのか、それとも心を見透かす力でもあるのか、、、
「北さんやろ?」
いとも簡単に私の心の内を言い当てた。