第3章 出会い
下を向きぎゅっと下唇を噛む
こんな顔、信ちゃんに見られたくない
悲しさと情けなさもあるけど、いつの間にか欲深くなっている自分が恥ずかしい…
たまたま近所に越して来た赤の他人を妹みたいだなんて思ってくれるだけで有難いのに。
一方通行な想いなのは最初から分かってた。
信ちゃんに何かを期待するのは、、、、違う。
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バスの中では治君が隣に座ってくれて少しホッとした
今信ちゃんとうまく話す自信は無かったから…
薄暗かった空はすっかり暗くなり、車内から流れる景色と街灯の灯りをぼんやりと眺める
そんな中、私が気落ちしてるのを知ってか、治君は居眠りし過ぎて担任に怒られた話や近所の美味しいお店の話し、最近見たバラエティ番組の話しなど他愛のない話を沢山してくれて。
時折2人でクスッと笑ったりしていたらあっという間に最寄りのバス停に到着した。
同じバス停で降りて家も目と鼻の先
それでも信ちゃんは律儀に家の前まで送ってくれる
「ほなまたな。」
『うん、おやすみ。』
「おやすみ」
さっき見た厳しい先輩の顔とは違って、私を見る信ちゃんの目は優しい。
でもそれは私が"妹"みたいな存在だからーーー
『・・・遠いなぁ。』
頼もしい背中を見送りながら呟く
この日は見慣れた背中が何だか遠く感じた。