第6章 難破
「うおっ、いーい匂いすんな!」
風呂から出て真新しい部屋着を身に着けた脩一は叫んだ。
「ありあわせの材料で申し訳ないけどシチュー作ったから食べよ。」
「腹減ってたんだよ〜いただきますっ!」
洗った頭にタオルを掛けたまま、脩一はシチューの皿に飛びついた。
「うっめ、うめえなあ〜サイコーだ!」
と何度も言いながら「おかわり」を繰り返して脩一はシチューを鍋ひとつ全部たいらげてしまった。
「あ〜食った食ったあ〜
いいなあ!脩二はこんな美味いものいつも食えるなんてさー!」
「ふふ……ほめすぎだよ。脩さん。」
料理をほめられて凛帆は素直に嬉しかった。
脩二は「綺麗な手が荒れるから」と凛帆に一切料理をさせなかった。
脩二自身、かなりの料理の腕前で材料にもこだわっていた。ましてや冷蔵庫の残り野菜とインスタントのルーで作ったシチューなど手もつけないだろう。
『ピカッ!』
閉めたカーテン越しでも分かるほど激しく稲光った。
「雷も雨もますます酷くなるなあ………」
脩一がそう呟いた時――――――
爆撃の様な雷鳴でアパートが一瞬揺れた。
「うわっ!!」
「ひゃっ!……」
二人とも驚きの声を上げた。
『バチン………』
蛍光灯が切れて部屋が真っ暗になった。
「て、停電!?」
「…………近くに落ちたな。」
「懐中電灯!確かこのへんに………」
凛帆は暗闇の中ベッドの近くに這いつくばって行った。
「いたっ!」
ベッドの脚に頭を軽くぶつけてしまった。
「大丈夫か?気をつけて。」
手探りで近づいてきた脩一が凛帆の背後から両肩を掴んだ。
『ドシャ―――――――ン!!』
その時また落雷の爆音が響いた。さきほどよりも激しい。
「きゃっ!!」
思わず凛帆は悲鳴を上げてすぐ後ろにいた脩一にしがみついていた、
その華奢な背中を優しく支える脩一。
どちらからともなく唇が重なった。
暗闇中でも惑うことなくお互いの唇を捕らえていた。
そして――――――
もつれ合う様に二人はすぐ脇のベッドへ倒れ込んだ。