第6章 難破
「うっわあ!酷いな、凛帆ちゃんに止めてもらわなかったらどうなってか!………ありがとな。」
土砂崩れのニュースを報じるテレビ画面から目を離さず脩一は言った。
脩一に促されて入った風呂から出た凛帆は手早く部屋着を身に着けた。
「今夜は帰れそうもねえな、車はあそこに停めてビジホか漫喫か探すか…………」
脩一はスマホを手に取った。
「………脩一さん!電車も止まってるみたいだから『帰宅難民』でどこもいっぱいだよ。」
「そうかあ〜まいったなあ……………」
「狭いけど………ここに泊まって……いいよ?」
「いやそれはまずいっしょ!」
「だってそれしかないし。それに―――私たちもうすぐ『家族』になるんだし。」
凛帆はなるべく屈託なさを装って言った。
「あはは、そうだな。『家族』か。
じゃあ、一晩世話になる!悪いな。」
「…………ふふっ、ではお義兄様、お風呂どうぞ。脩さんも雨で冷えちゃってるでしょ。」
「ありがと!………よいしょっと。」
「あ、ちょっと待って!」
凛帆はチェストの奥から男物の部屋着一式を取り出して立ち上がった脩一に手渡した。
「これ、着て。」
「あ、脩二が着てるやつ?」
「……うん、そう。だからサイズはぴったりだよ。」
凛帆は嘘をついた。
決してアパートに足を踏み入れることがない脩二だったが「いつかは………」と淡い期待を抱いて買っておいたものだった。