第6章 難破
『大雨により国道○○号線で多数の土砂崩れ発生。』
テレビ画面の字幕を見て、凛帆は弾かれた様にアパートを飛び出した。
(国道○○号線は△町に続く道だ!脩さんが巻き込まれてしまう!)
傘も持たず、サンダル履きで脩一を追いかける凛帆。
(どうか、どうか間に合って!車に乗らないで。)
―――――雨の勢いは衰えない。
雨水を浴びて朦朧とした凛帆の瞳がコインパーキングに入ってゆく壊れかけのビニール傘を捉えた。
「……脩さんっ!!」
ありったけの大声で叫んだが激しい雨音に消されて脩一には聞こえていない。
パーキングの入口には雨水が溜まっていたがそれも顧みず、バシャバシャと音を立てて凛帆は脩一の元に駆け寄った。
「脩さんっっ!!」
停めていたRV車の扉に手を掛けた脩一の腰に凛帆は両腕で抱きついていた。
「わわわわわっ!何っ!びっくりした!!
…………凛帆ちゃん!?どうしたの、傘も差さないで!」
「ど……―土砂崩………れ、こ、国道……あぶな………」
必死に走って息も絶え絶えの凛帆は今にも膝から崩折れ落ちそうだった。
「………脩……さん。行っちゃ……ダメ……?」
脩一の腰に回した腕に力が込もった。
「わ――――っかった、わかったからまず落ち着こう!」
脩一は凛帆の冷えた体を右腕で支え、左手に持ったビニール傘をかざした。
「………何となく状況は読めた。行かないから、帰らないから。
アパートに……戻らせてもらっていい?」
前髪から雨水を滴らせながら凛帆は頷いた。