第4章 夏浅い海
「……っくしょ―――」
脩一は右足を上げて親指の付け根に刺さっていたガラス片を引き抜いた。
「…………!!大変!止血しなきゃっ!」
「大丈夫だって〜海水ですすいどきゃいい。」
「だめだって!結構血出てるっ!」
凛帆は脩一の腕をつかんで海から引きずり出し、岩陰に座らせた。
「結構、ゴミ多いな―って思ってたらやられちまった……昔は綺麗だったんだけどな………」
凛帆は砂浜に置いていたトートバッグからペットボトルの水やタオルなどを出してテキパキと応急処置をした。
「……痛いよね?」
「凛帆ちゃんのおかげで全然平気!しかしスゴいな。看護師の資格とか持ってるの?」
「そんな、大したことしてないよ。一応医療機器の会社員だから一通りの講習は受けてただけ。」
「いや―――助かったよ、ありがとな。
――――凛帆ちゃんに刺さらなくて……良かった………」
濡れて長めの前髪から海水が滴っていた。その奥の時化た瞳に凛帆は呑み込まれそうに…………
―――――次の瞬間、どちらからともなく唇を重ねていた。
夏浅い海の淡い潮の味がした――――――
足場の不安定な岩場で脩一は凛帆がひっくり返らない様にがっちり背中を支えていた。
凛帆もまた左手をその逞しい背中に回した。
二人のカラダが密着する―――――――
少しだけ遠慮がちに脩一は右手を赤い水着の中に滑り込ませる………
(だ、だめ!こんなの…………)
凛帆の理性が働いてカラダを捩って一瞬逃れようとしたが、本能には勝てなかった。
「………んっ……あっ…………」
意図しない声が凛帆の喉の奥から漏れた。