第4章 夏浅い海
『ウ―――――――――――』
正午を告げるサイレンが鳴った。
凛帆と脩一は我に返り、弾かれる様にカラダを離した。
「あ………はは、これからは海に入る時は親父のビーサン、じゃねえギョサン履いた方がいいなっ。」
「………う、うん!応急処置はしたけど、お医者さん、行こっ。」
「………大丈夫、大丈夫。こんなん後でオロナ〇ンつけときゃ治っから!」
「だ、だめ!ばい菌入ったらヤバいよ!」
二人ともさきほど二人に起きたことはなかったことにしたいという………そんな気持ちからか、何気なさを装おうとしても会話がどことなくぎこちなかった。
凛帆がRV車のハンドルを握り、脩一を『休日診療』のクリニックに無理矢理連れて行った。
「大げさだなあ、包帯巻かれちゃったよ。」
「……痛くないですか?」
「ぜんっぜん!あ、運転どーも。こっからは俺が。」
「だめです!私がします!」
「いやあ〜悪いけどやっぱり凛帆ちゃんの運転危なっかしいわあ。」
「えぇっ!?…………ですよね〜」
「だから俺がやっから!医者の許可もとってある!」
「…………すみません。」
脩一はくしゃくしゃと凛帆の髪を撫でた。
海鮮丼の店で昼食をとった後、脩一は凛帆を駅まで送った。
「世話かけちまったな。」
「いえいえ、海………楽しかったです。」
「そんなら良かった!じゃまたな!気を付けて行けよ。」
(…………海岸での出来事、夢だったみたい。)
人気のないホームで列車を待ちながら、凛帆は自分のカラダを自分で抱きしめた。
(熱いな…………日焼けのせいかな?………)