第4章 夏浅い海
次の朝、ビジネスホテルの前で待っていた凛帆の姿を見て、脩一は驚いた。
営業用の紺のビジネススーツだったはずがノースリーブの白いワンピース姿だった。
麦わら帽子も被っている。
「あらら?見違えたね、凛帆ちゃん!」
「えへへ………せっかく脩さんが海に連れて行ってくれるのにスーツじゃ気分出ないから早起きして服買って来ちゃった!」
「買った?!どこで?」
「駅前商店街の『おしゃれの殿堂☆ヤング洋品店』が開いてたから……」
『泳ぎが好きじゃない』という脩二とは海など行ったことはなく、ひさびさの海行きにテンションが上がった凛帆は早起きして駅前商店街を探索に出た。
シャッターの下りている店が多かったが、古い店舗でがんばっている店もポツリポツリとあった。
「あぁ、あそこかあ〜〜」
「こう言っちゃ失礼だけど置いてあるものが意外にセンス良くってびっくりしちゃった。」
「あのお店のおばちゃん、若い時は東京でデザイナーKのアトリエでお針子してたらしいからな。」
「えぇ!道理で!」
「えへん、Z町はこれでも建築家Tやヤング洋品店のおばちゃん、そして脩二といった才能溢れる人物を輩出しているのだよ!
まあ、俺みたいなカボチャもいるけどさっ。」
「カボチャ!?」
予報どおり晴れ渡った今日の空の様に明るい笑い声を二人は響かせた。