第3章 廃校のバラード
「どうしたの?続き、聴かせてよ。」
「あ、はいっ。」
――――私は再び弾き始めた。
(眠たそうだけど、あの様に言ってくださってるし……それに。)
ピアノは手入れが良いだけではなく深く豊かな音色をしていたので凛帆は弾いていたかった。
この曲は非常に煽情的な中間部を経て―――――何らかの予感を感じさせて終わる。
「………えへへ、久し振りだしいっぱい間違っちゃった。
―――――お義兄さん?」
脩一の視点は遠くにあった。そしてその荒れた海を思わせる瞳からは涙が溢れていた。
一粒こぼれると脩一は我に返って手の甲で拭った。
「あっは……クラッシックてよくわかんねえんだけど、どうしてか感動しちまったなあ!」
照れくさそうに白い歯を見せて笑う。
「…………あ、ありがとう……」
「おっと、こういう時は拍手するんだよな、拍手。」
と言って、脩一は不器用に手を叩いた。