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凪の海 時化の海

第3章 廃校のバラード


RV車は少し高台で海の見渡せる小学校の校庭に乗り入れた。

「ここは――――」

「俺らここの卒業生。」


二階建ての可愛らしい校舎。

だが鎮まりかえっていてさきほどまで子どもたちが居た様な気配がしない。


「残念ながら今年の3月で廃校になっちゃってさ。」

よく見ると校庭のブランコは取り外されていた。


「よっ!」

脩一は鉄棒を掴んで逆上がりをして見せた。


「いい建物だろ?建築家のTって知ってる?」

「えぇ、有名なオフィスビルとか美術館を設計している……」

「そのT先生がこの町出身でさ、この小学校を設計してくれたワケだ。」

「へぇ………」

「さて、中に入ってみるか!」

「だ、大丈夫なんですか?」

「平気、平気!」


脩一はスタスタと校舎の中に入っていく。躊躇いながらも後を追う凛帆。



一階は教室。
机や椅子は既に撤去されていたが黒板には
『さようならZ小学校』の文字が残されていた。

「寂しいねえ………」


ギシギシ軋む木の階段を昇る。

二階は職員室と各種教科室。

「この廊下ダッシュして何度も叱られたなあ!」

「あはは、目に浮かびます。」

「まいったな。」

小学生の様にいたずらっぽく笑う脩一。




一番奥の部屋は音楽室。
窓が二面で海が綺麗に見える。

「素敵――――あら、ピアノがまだ残されてる。」

「うん。」

脩一はバサバサと小振りなグランドピアノに掛けられていた布を払い除けた。


「なんか、弾いてよ。」

「え?」

「ピアノ、やってたって聞いた。」
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