第7章 逢瀬その7
中嶋との関係が見つかりそうになった時から数か月が過ぎていた。
本当にあの時は危なかったと美智は感じていた。
今日は土曜日である。
エンジニアとして働いている夫、龍一も仕事は休みであった。
龍一が自宅にいることはとても珍しいことである。
リビングのソファーに腰かけて美智が淹れてくれたコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
外はとても良い天気である。
洗濯物が日の光を浴びてひらひらとなびいていた。
とても穏やかな土曜日の昼下がりであった。
そんな中、龍一がいきなり美智にこう言ってきた。
「今晩、一緒に食事にでかけないか?」
「え?食事?」
「そうだよ。食事だよ」
「連れて行ってくれるの?」
「あぁ、連れて行くよ。行くか?」
美智はちょっと驚いたのだ。
そんな優しい言葉を龍一から聞けると思わなかったからだ。
「行くわ…」
「あぁ、今日は二人だけでゆっくり食事をしよう…」
「嬉しい…どこに食べに行くの?」
「たまプラーザにある“モンスーンカフェ”だよ。美智はあの店好きだろう?」