第1章 逢瀬その1
「セックスを?」
「うん、そうなの」
「それは、寂しいな…」
「はい…」
「女性が浮気するってことは、余程の理由がない限りしないからね」
「そうなんです…」
そう美智は話すと黙ってしまった。
「俺のウチも同じだよ。嫁とはセックスしてないし、子供もいない…」
「そうなんだ。同じですね」
「今日は何も考えないで飲んで食べよう」
「うん、そうね」
二人はそう話すと笑った。
美智は少し磯田のことが好きになっていた。
それに同じくセックスレスで子供もいないのか…と、思って内心安心していたのである。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
帰る時間が来たのだ。
今日、磯田は自分の車で来ていた。
なんの躊躇もなく美智は車に乗り込んだ。
磯田の車はランドクルーザーだ。
かなり大きな車である。
美智の自宅は横浜市都筑区にある港北ニュータウンの一角にあった。
「じゃ、家まで送るから」
「ありがとう」