第1章 逢瀬その1
「嫁が妊娠したらしい」
メールにはそう書かれてあった。
子供ができたのか…と、美智は思った。
「子供ができたのならもう関係は終わりにしよう」
そう、美智はメールに書いた。
美智は自分の存在を子供が知った時とてもショックを受けるのではないか…と思ったのである。
磯田は納得していないようだった。
直ぐに磯田から電話がかかってきた。
「これら会わないか?事情を説明するから…」
「事情?奥さんとはセックスレスで子供はいないって言ってたじゃない!!」
美智は電話口でそう怒鳴ってしまったのだ。
内心とても裏切られたという思いでいっぱいだった。
奥さんとはセックスはしてないって言ってたのに…嘘つき…。
そう、思っていたのだ。
「もう、直哉とは会う気はないから…」
美智はキッパリとそう言ったのだ。
磯田は黙ってしまった。
電話を切った後、美智は激しく泣いた。
恋人から裏切られたという思いでいっぱいだったのだから。
美智は磯田のことが好きだったのだ。
その気持ちに嘘はなかった。
このことが原因で二人の関係は終わってしまったのである。