第1章 一粒、···雨
唇からは血が滲み、垂れる。
「止めてってば!どうしてこんな事をするの?」
夏油くんは何事も無かったように唇の血を親指で拭った。
「どうして··と聞かれれば君の力が欲しいからかな」
「···はぁ?」
私の問いかけに夏油くんはさらりと答えた。
私の力が欲しいと言った夏油くんに私は疑問を覚えた。
私の力が欲しいのならば、その術者である私を殺せば簡単な事だ。
夏油くんならば私などいとも簡単に殺せるだろうし、奪える事も出来るはず。
ならば、何故··?と疑問が生まれる。
「私の力が欲しいのなら、私を殺せば良いじゃない」
「そうも思ったんだけどね···タチの悪い事に、私は君の事がまだ忘れられないみたいなんだ」
(私の事が···忘れられない···?)
それってどう言う意味?
私を··好きだと言う事?
夏油くんの言葉が頭の中をグルグル回って疑問が出て来る。
そんな私を他所に、先程私に唇を噛まれたと言うのに強引に私の唇を割り、夏油くんは空かさず唇を押し当て舌を捩じ込んで来た。
「だから私は、"君ごと"胡蝶を奪う事にするよ」
「んんっ!?····んんー!ふっ、んぁ···ゃっ」
逃げる舌をねっとりと絡め取られて、口内を犯されて行く。
歯列をなぞられ、舌を吸われる。
(苦しい···、でも、気持ちいい···、どうしよう···逃げられない)
夏油くんと深い口付けをする度に、私の口内に唾液が溜まって行く。
唾液を飲み込まない為に息を止めているけれど、そろそろ限界が近い。
「いつまで我慢しているつもりだい?あぁ···そうか、なら、飲ませてあげるよ」
私が唾液を飲む事を拒んでいると、夏油くんは私の中に舌を捩じ込み嚥下させるように動かした。
「んんー!!ッッ!···」
(飲んじゃダメ···!)