第1章 一粒、···雨
そうだ、私···!
思い出した。
夏油くんの保有する呪霊と戦って、夏油くんに···!
「え、ちょっ!?」
私は今置かれている自分の立場を理解した瞬間、一気に顔に熱が上がるのが分かった。
「夏油くん、何してるの!?」
「何って···雨に濡れて冷たくなっていた君の体を温めてあげているんじゃないか」
どうやら私は何処のホテルのベッドに寝かされているようで、夏油くんと私は肌の姿で素肌を重ね合っていた。
「離して!、帰ります」
「その"癖"まだ健在なんだね」
「···離して」
私は怒ると、必ず敬語を使ってしまう。
それはさて置き、夏油くんは逃げる私に覆い被さると私の頭上で縫い止めた。
これは何かの悪い冗談であって欲しい···。
そう願うしか、今の私には無かった。
「離さないよ。離したら私から君は逃げるだろう···?」
どんなに力を入れて抵抗しても、抗えない力に抑え込まれる。
「んぅっ!!···っ、んんー!」
囁かな抵抗に私は夏油くんから顔を背けたのだが。
片方の空いた手で私の顎を強引に自分の方へと向けられたかと思えば、瞳を細めて笑みを浮かべたまま私の唇を塞いだ。
噛み付くような口付けに、私はガリッと夏油くんの唇を噛んだ。
「っ!···」
さすがに夏油くんも驚いたようで、私から瞬時に唇を離した。