第2章 好き、だから
「ん」
そう言いながら右手を差し出してくれるから、なんの迷いもなく条くんの手を握った。
「…ごめんね、急に呼び出して、泣いたりして…」
周りを見えなかったのは確か。
何やってるんだろ…
「もしかして…好きだった人に、会ったのぉ?」
「…」
条くんとは、1年前…この銭湯で出会った。
オレンジ色のスカジャンを着て、作務衣にサンダル。
極めつけは、色つきのサングラス。
あー、この人とは絶対合わないなって思っていだけど、何度か会ううちに顔見知りになり、銭湯友達になった。
何がどう転んだのか、分からないけど数ヶ月前に条くんに付き合おうって言われた。
心の中に梅ちゃんが居て、でも、条くんにも惹かれてる自分がいた。
だから…《ちゃんと気持ちの整理がついたら…お願いします》と答えた。
条くんも、いつまでも待つよっていってくれた。
梅ちゃんに会っても動揺しないーー。
そう思っていたんだけど…
現実は、そう甘くなくて…
梅ちゃんがあんなことするなんて、思ってなかった。
「実はさ、明日……」