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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷 零】

第1章 記憶と感覚。


ガラスケースの前に立つ。

『これを見ても、何も言わないの?』

安室もガラスケースの前に立った。
閉め方がわからずに、開いたままだ。

「設置したのが俺だからな」
『そう…』

彼もまた、一般市民とは違う場所で生きているのかもしれない。
そうでもなければ、辻褄があわない。

安室がガラスケースのサイドに親指をあてると、開くときと同様にスタイリッシュに閉じた。
横を覗いてみると、指紋認証の電子的なものがそこにも貼り付けられていた。

『それで閉められるのね…』
「本当に、何も覚えてないんだな」
『そうみたい。でも、身体の感覚と勘で動いている感じよ?』
「勘はやめた方がいいな、良い方じゃない」

貼り付けられたものではない、優しく柔らかい笑顔に、胸がふわっとする。
そして、ふいに、言葉が溢れた。

『零はその笑顔の方が好きよ、可愛らしくて』
 
何気なく笑いながら返した言葉、その意味に少し遅れて意識する。
身体は冷水を浴びせられたように、硬直した。

「?」
『零って……、誰?』

不安げに振り返ると、後ろから抱きしめられた。

『安室 零って言うの?』
「安室 透で…」
『?』
「俺は、降谷 零だ」
『偽名?』
「安室 透がな」
『私は ?合ってる?』
「あぁ、合っている」

どこか俯瞰していたという存在に、現実味が湧いてくる。

『ちなみに年は24らしいわ』
「知っている」
『あなたは?』
「29だ」
『年上だったの』

後ろから抱きしめられた背中は温かくてほっとする。
ちゅうぶらりんだった自身に、血が通うような、やっと地に足がついた気分だ。

『話せる事でいい、教えて』
「安室 透は毛利探偵事務所に近づくための偽名だ」
『降谷 零は?』
「俺の本名で、公安警察でもある」 
『公安!?』
「あぁ、公にする事はできないが…」

そんな大事な秘密を、私に話してしまって良いのか。
こちらの事情や、まだ話せない理由があったのではないだろうか。
信用するにしても、出会って数日、それに値するとは思えない。

『そんなに大事な話を…』
「君を疑うべきではなかった」
『私…悪いやつかもよ?』
『そうなったら、その時だ』

どれ程…、覚悟のいった話だろう。
抱きしめられる腕に、そっと手を重ねた。
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