第5章 偶然と必然。
しばらくそうして、まったりとした時間を過ごしたけれど、時間は刻々と過ぎていく。
『先にお風呂にはいって?』
そう伝えると、やや不満そうな視線が向けられる。
ソファーから立ち上がったと思えば、目の前に手を差し伸べられている。
その手に自身の手を重ねると、降谷はバスルームへと歩き出した。
『え!』
「問題あるか?」
『問題はないけれど…』
レストルームに入れば、あたりまえだけれど服を脱ぎだした。
その姿がなんとも色っぽくて見つめてしまう。
ワイシャツを脱げば、鍛えられた綺麗な身体が露わになった。
吸い寄せられるように、腸腰筋を指で触れていた。
「…っ」
少しだけ吐息が漏れて、艶めかしい姿に生唾を飲み込んだ。
手のひらでひたりと触れて、腹斜筋をとおり胸筋までゆっくりと滑らせた。
親指が小さな突起を掠めてしまって、くすぐったいのか降谷はわずかに身をよじる。
親指の腹で、軽く押し上げた。
「んっ」
降谷もここが感じるらしい。
『かわいい…』
その反応がたまらなくて爪を軽くあてながら、頬を手のひらで包んだ。
どちらともなく唇が合わさって、時折漏れてくる吐息ごと飲み干した。
「…傷は…」
気遣わしげにかけられた声に、噛まれた痕のことかと理解する。
傷はすっかり治っているけれど、うっすらと黄色味がかった痣を残している。
『傷は治ってるけど…』
「けど?」
降谷の手で衣服が脱がされて、一糸まとわぬ姿になった。
うっすらと残る痣にそっと唇が触れた。
『ん…』
「痛みは」
『全然、っ、なんともないけど…、気持ち悪くない?』
降谷に噛まれた分、そこかしこと痣だらけではある。
「随分と無理をさせてしまった」
『ほんとに大丈夫だから』
あの行為に興奮を覚えてしまったことを伝えるのは、まだやめておこうとは思った。