第1章 [十戒]好きでもいい理由が1つでもあればいいのに[轟焦凍]
場所は変わり、そこは大きなステンドグラスから光が溢れる教会。床も透明なガラスで出来ており、底に流れる煌めく水のおかげで室内はより明るく輝いていた。
けれども、そんな軽い室内とは打って変わって参列者達の表情は暗く沈んでいた。溜息を付く者もいれば今にも泣き出しそうな者もおり、席を埋める人々は皆ハンカチを片手に涙で震えていた。
最前列のど真ん中を占領する、金髪碧眼の中年男性を一人除いては。
一番良いポジションを占領するその男性の表情は教会同様明るく煌めいていた。
彼は、教会のドアを見ては今か今かと何かを待ちわびているようだった。
そして、教会の扉が軋む音を立てて開く。
その瞬間、と金髪碧眼の男性が立っていた。
同時にファンファーレが鳴り響き、祝福するかのように綺麗なオルガンの演奏が聞こえてくる。
「新婦と新郎の入場!!」
声を合図にしたかのように、風が吹けば離れていきそうなくらい軽く手を握っている若いカップルが歩き出した。
男性はちらりと最前列にいる男性を見ると、ゆっくり目を細めた。その瞳は憎悪の炎で揺らめいていた。
けれどもでっぷりと肥った男性は気にする様子もなく、楽しそうに拍手を送っているのだった。