第1章 [十戒]好きでもいい理由が1つでもあればいいのに[轟焦凍]
二人が新婦の目の前に立つ。
静かに本を携えていた大柄な神父は、二人が来たのを瞬間本を開くとゆっくりと口を開いた。
「新婦=様。貴方はこの先どんなことがあってもこの人を愛し、尊敬し、慰め、助け、生涯を通してその誓約を守ることを誓いますか?」
はゆっくりと目を伏せながらも唇を噛み締めた。
そして、深呼吸をした後俯きながら答える。
「……はい、誓います」
次に神父は新郎のほうを見ながら、ゆっくりと口を開いた。
「新婦、貴方はこの先どんなことがあってもこの人を愛し、尊敬し、慰め、助け、生涯を通してその誓約を守ることを誓いますか?」
神父が言葉を言い終えた瞬間、先程まで暗く沈んだ青い瞳が力強く煌めいた。
「はい、誓います」
その瞬間、新婦は驚きながら新郎の顔を見つめる。
新郎もまた、新婦の手をしっかりと握りしめた後自分の花嫁に優しく微笑みかけた。
「……しっかり掴まってろよ」
その瞬間、神父の後ろにあったステンドグラスが割れ、中に赤色のドラゴンの顔が飛び込んでくる。
最前列にいたでっぷりと肥った男は驚いて逃げようとするものの……、その後ろにいた他の参列者達から煙が溢れてきた。
「……というわけだから、お二人さんお幸せに!!」
神父からも煙が溢れ出てくる。
そうして数秒後、煙が消えた頃でっぷりとした男は黒い鎧を身に纏った兵士達に囲まれていた。
その中心には、神父服を着た大柄な男が立っていた。けれどもその顔は先程とは違い、金髪に黄色い触覚が二本風に靡いていた。
「お、お、お、お前は、エンデヴァー王国のオールマイト……?!」
でっぷりとした男は、オールマイトを見た瞬間顔を真赤にし目を血走らせる。
「やぁ、リンデン国の大臣さん!覚えていてくれたのかい?嬉しいね。今日ははるばるうちのショウト王子と嬢の結婚式に来てくれて、本当にありがとう!!」
リンデン国の大臣は勢いよく立ち上がると、オールマイトの服を掴もうとしたが……、周りにいた兵士達に剣を突きつけられ渋々両手を上げた。
「……どういうことだ!!こんなことをして、無事でいられると思っているのか!!」
大臣は歯切りしをしながら、オールマイトの後ろにいる三人を見つめる。