第1章 [十戒]好きでもいい理由が1つでもあればいいのに[轟焦凍]
その後サラは意を決したように頬を叩くと、唇を噛み締めポロポロと宝石のように綺麗な涙を流しつつゆっくりと主人を着飾っていくのだった。
は静かに正面を向くと、目を伏せた。その手はきつく握りしめており、爪先が肉に食い込み白くなっている。
そして、彼女はゆっくりと目を開いた。その瞳はもう濁っておらず、決意で煌めいていた。
そうして、窓の外に羽ばたく白い鳥に振り向きもせずリタが開けた扉を潜り抜けた。
その先では、金髪碧眼のお人形のように美しい男性が待っていた。
と男性の視線が絡み合った。けれど、の決意の裏に潜んでいる冷たい瞳が温かな光を灯すことはなく、同時に金髪の男性の瞳は暗い光で曇っていた。
まるで、見世物小屋(サーカス)で舞い踊る道化師(ピエロ)のような仮面を被った二人は、互いの手を取ると軽く手を繋いで歩き出した。
互いに重ねた手は二人の指先だけ重なった簡易な物だった。