【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第3章 私だけの貴方
「…条…怒ってないの?」
「……怒る?なんでぇ?」
歩きながらいつきは十亀に聞いた。
分かっていて、十亀は惚けてくれているのだろうか。
自分が浅はかにクリスマスプレゼントを買ってしまった。
十亀の気持ちに応えられ無いと分かっているのに。
思わせぶりな態度をするなと、怒られても仕方無い事だと思っていた。
だけど……。
十亀は立ち止まると、いつきの顔に近付いた。
手を握ったまま、十亀の顔が近付いてくる。
いつきはそれがキスだと分かっていても、今度は避けなかった。
また軽く触れて、だけどいつもより長く十亀の唇はいつきに触れていた。
唇を離した時に、2人の吐いた息が白かった。
まだキスの時の呼吸の仕方に慣れていなくて、息を止めてしまう。
「……体が冷えて来たから、帰ろうかぁ。」
顔が赤いのは寒いからなのか、キスをしたからなのか。
でもその赤らめている顔がとても愛しく思う。
こんな気持ちになれるのに、怒る訳が無い。
今は小さな好意でいい。
それがいつか梅宮より大きくなって、いつきが自分の事を男として見てくれるなら、何でも捧げられる。
時間も。
気持ちも。
全部全部捧げるから。
来年のクリスマスプレゼントもまた買おう。
きっと絶対一緒にいるのは自分だから。
十亀はそう思いながら、少し戸惑っているいつきの手を握り直して、ゆっくりといつきの家に帰って行った。