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【WIND BREAKER:®️指定】My friend

第2章 幼馴染は殻を脱ぐ


いつきの母親なんだから、十亀がお見舞いに来る義務は無い。

ただの八つ当たりだ。


よくならない母親。
それを受け止めなければいけない現実。

そんな時に、隣に居た十亀が離れていった事。


そんな事、誰も悪くなくて、受け止めきれない現実が気持ち悪くて。
ただ大声で叫びたかった。



「…… いつき。」

十亀の手がいつきの手をしっかりと握った。
人を殴ったであろう手は、拳が切れていて痛々しく充血している。



まるで梅宮の手の様だといつきは思った。



でもおかしいな。
梅宮の手が痛々しく見えた時より、今の十亀の手の方が胸を強く痛めた。



「おばさん元気だったぁ?」
「……今日は疲れさせちゃったみたい……。」
「いつきに会えておばさんはしゃいじゃったんだねぇ。」


十亀がお見舞いの様子を聞いてくれて、いつきと十亀の手の上に涙が溢れた。

その雫が自分のモノじゃないと分かっているから、十亀はいつきの顔を覗き込んだ。




十亀が側に居ない日常はこんなにも寂しい。
逆に十亀が側に居てくれたらこんなにも安心できた。




「……… いつき、幼馴染じゃなくてもずっと一緒にいる事は出来るよぉ…。」

十亀の言葉に、いつきは俯かせていた顔を上げた。
いつきと目が合い、十亀は目を細めて笑い、いつきを抱き締めた。



「いつき、俺と付き合おう。俺をいつきの好きな男にして…。」

小さな声で懇願する様な言葉が耳元で聞こえると、更にぎゅっと抱き締められる力が強くなる。




それは残暑も終わり、秋に差し掛かった夜の事だった。




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