【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
「はぁ……はぁ………。」
遠くでお囃子の音が聞こえる。
今日は年に一度の神社のお祭り。
私と十亀条はいつもなら一緒に、私の父親の屋台の後ろでたまに店番をしながら祭りを楽しんでいたはずだ。
今はそれが随分と昔の様に、私は十亀条と実家の酒屋の2階で裸で抱き合っている。
いや組み敷かれている。
いつものお囃子の音が聞こえる度に、現実に戻るのに、2人で籠っている部屋の熱気がまた。
2人の世界に引き込む。
電気を消した薄暗い部屋の中で、汗ばんだ十亀条をゆっくりと見上げた。
いつも見慣れた顔が初めて見る情欲を込めた男の人の表情に、私は思わず顔を顰めた。
こんな十亀条を私は知らない。
「うっ……条……。」
腰を掴まれて、肉が弾く音を聞きながら、私は条を睨み上げた。
それでも条は腰の動きを止めようとはしなかった。
何処か傷付いたように、いつもより目尻が下がっていて、苦しんでいる私を可哀想だと。
そんな表情で見下ろしていた。
そうだ。
この行為は同意では無い。
こんな事到底許せるはずもないのに、条は何度も何度も私にキスをしてきて、私の怒りを懐柔しようとしているみたいだった。
「いつきごめん……もうすぐ終わるから……。」
条はそう呟くように言うと、腰の動きを早めた。
初めての行為に痛みが麻痺して、もう何をされてもそれ以上の苦痛は無かった。
慣れてきた痛みの中で、私は少ししか開かない目で条を睨んだ。
「…嫌い……、こんな事する条なんて大嫌い!!」
痛みに顔を歪ませながらも、私は思い切り条に叫んだ。