第3章 escada
side黄瀬
一刻も早くつばきと話したい俺にとって、イギリスでの2週間を超えるモデルの仕事は本当にタイミングが悪いと思った
だけど出国前に短い時間とは言え電話ができて、気まずいとかぎくしゃくって雰囲気からは抜け出せた。
まだ歴史は浅いけど、ハリウッドなんかでもめちゃくちゃ評価が高いドレスのブランドが、タキシードのラインを出すからそのモデルを務めて欲しいって指名をもらった。
どこで俺を知ってくれたのか分からないけど失敗はできないからプライベートとは切り離さなきゃいけない。
めちゃくちゃ心配で、一刻も早く帰って会いたいことは変わらないけど、日に数回送られてくるメッセージからはつばきが元気なことが伝わってきて、撮影は順調にこなせた
最初はどうなっちゃうんだろって不安だったけど、ブランドディレクターからは次も必ず指名するってお墨付きまでもらえた
つばきがいつも言ってくれてる
「涼太は顔が小さくてすっごく整ってて、手脚も長いのにヒョロヒョロじゃなくてすごく男らしい体だから、モデルさんは天職なのかもね!」
俺がこんな仕事じゃなきゃ我慢させることはもっともっと少ないはずなのに、仕事のことを責めたりするどころかいつも認めて、誰よりも俺を応援してくれてる。
「だけどあたし的には海常のバスパンにタンクトップの涼太が一番好き」
あまりに暑くて夏はバスパンがめちゃくちゃ快適だったけど、仕事が忙しくて家で履くのが全部洗濯にまわってた時にずっと捨てられない海常のバスパンを履いた。
モデルのくせに高校のユニとかセンスないって言われるのかと思ったら、逆に大喜びして上まで着させられた
似合ってるとか言って喜んで、今ではリクエストしてくることすらある。
モデルの俺を好きだって言ってくれるけど、プライベートではモデル像を押し付けてこないで、素の俺をすんなりと受け入れてくれるつばきとの恋愛は心地よくて楽しくて、幸せだった。
だから、健康ならそれでいい。
メンタル的な問題でSEXできなくなってるなら、いくらでも待てるし、つばきが治療をしたいと思ってくれるなら俺にできることは何でもする。
スケジュールもそっち優先に組み直す。
つばきと付き合って、本気で結婚を考えるようになった今、俺はつばきが何よりも大事だから