第1章 北風
sideあんず
午前中の診察を終えてスマホを開くと、しょっちゅうどうでもいいことでくだらないやり取りしてる中学からの親友で一番の仲良し藤堂つばきからなにやら深刻そうな匂いを漂わせたメッセージが届いていた
(今日会いたいんだけど、無理?)
つばきのこの文面はいい内容ではないことだけは確か。
もしかして…大好きな彼となんかあったのかな…?
つばきの彼は超人気モデルの黄瀬涼太
知り合ったのは本当に偶然というかなんというか…
あたしの恋人の大輝は黄瀬君と中学時代からの付き合いで、今でもちょくちょくストバスしたりしてるし、あたしたちの家にもたまに遊びに来てた
最初見た時は驚いたけど、話してみるとほんとに普通だし、大輝にはちょこちょこドツかれてて、テレビで見る余裕しゃくしゃくシャララな黄瀬涼太って感じは皆無で、週刊誌に撮られたほとんどが全くの事実無根だって苦笑いで教えてくれた。
仕事を真剣にやりたいから彼女を作ってる場合じゃないんスって言った彼の言葉に嘘はなかったと思うけど…
出会ってしまえばしょうがない。
秋に差しかかったその日、あたしは病院がお休みで大輝とゆっくりしたいと思ってたのに、朝からストバスに行っちゃって一人でつまらないってことをつばきにメッセージすると午後は残業調整で早上がりすることになってるからってお昼も食べずにうちに遊びに来てくれた。
何を食べようか迷ってると、お昼の時間帯の番組で秋の味覚特集をやっていてサンマがおいしそうに焼かれていた
「「サンマ食べたい!!」」
二人で同時に叫んで一緒にスーパーに出かけてお魚コーナーで新物のサンマ眺めた
「ねぇ、どうせ焼くなら七輪とかでやりたくない?」
「あ、確かに。でもマンションじゃ七輪できなくない?一酸化炭素中毒になる」
「実家の庭行く?今日パパいる日だから炭もパパにやってもらお」
「それいいの?(笑)」
「全然いいよー。パパもつばきに会いたがってるし」
「じゃあおじちゃんのサンマも買ってこ」
パパに電話を入れてサンマを買っていくからお庭で焼けるように用意しておいてってお願いして9匹もサンマを買ってあたしの実家に向かった。