第6章 ろく
「4年に一度が、今日か。感慨深いな」
「こーら、何してんの。浸ってないで布団干すの手伝ってよ」
「痛た…、痛いぜ。腰が。ジジィだから、俺は」
「下っ端なんだから、ジジィでも何でも手伝え。主なんて誕生日なのにみんなの手伝いしてくれてるって言うのにさ」
2月29日。今日は主の誕生日だ。
みんなは忙しなく布団を干したり片付けたりしていて、自分の分を終えた俺は、主が1番見える場所で主を眺めてる。
今日は久しぶりの非番で、天気は晴れ。冬と春の間の季節だと言うのに、気持ちいい温度で眠くなる。
「下っ端って、もうここにきて何年経つと思ってんだよ」
「ごちゃごちゃ言ってないで、行くよ」
「はいはい、怖い長兄だな」
「可愛くない末っ子だな。って、茶番はいいから、ほら」
押し付けられたシーツの束を渋々受け取る。
「鶴丸さ、何みてたの?」
「さぁな」
「主でしょ」
「なんだ、気付いてたのか」
「主、昔は可愛かったけど、最近綺麗になってきたよね」
「…そうだな」
「兄ちゃんが当ててやろうか、お前の気持ち」
「茶番はいいって言ったの、どこの加州清光だ?」
「まぁいいじゃないの。手を動かしてるんだから、私語はありだよ。
んー、…主好きだなぁ。可愛いなぁ、抱きしめて離したくないなぁ…とか?」
「それは、どこの鶴丸国永だ?」
「なんだ、違うの」
「主に好感はもてるが、惚れた腫れたは違うだろ。俺たち刀だぞ?」
「それってさ、鶴丸の誤魔化す時のくせだよね。刀を理由にする、悪い癖」
「悪いか?」
「人の身を得て、心を持ったんだからそう言う感情を持ってもいいと思うんだよね、俺は。人間にはなれないけどさ、寿命はないけど俺たち物だからこそ、いつ折れるかわからないし。ジンセイ短し恋せよ乙女ってね」
「俺は乙女じゃないけどな。…それに、俺は一生片思いでもいいんだ」
「なにそれ、やっぱり主?」
「俺には心に決めた相手がいるんだ。もう手も届かないけどな」
少しだけ昔話をしようか、今の主を見ていたらどうしても"きみ"が恋しくなったなんて。
誰かに話したくなったなんて、俺も少しは成長したんだろうか。
「え、初耳なんだけど」
「あぁ、今まで誰にも言ってないからな」
「演練で会った審神者?」
「違う」
「じゃあ、政府の人間?」
「違う」