第5章 ご
「ねぇきよ」
「どうしたの、主」
「つるさんは?」
「あぁ、…うん。内番してるよ」
「そっか」
「なぁに?俺がいるのに不満?」
「つるさんの、おしごと、きょうはなに?」
「馬当番かな。江と特別出陣の要請があった、水心子と大典太のどっちかの代わりだった気がするから」
業務日誌を打ちながら、縁側に座る主を盗み見る。
鶴丸のやつ、たった一回の保育園の送迎を頼んだだけですぐ根をあげるんだから、困ったもんだ。
まぁ、お世話掛りの仕事がある時はずっとそばにいるから問題はないんだけど、あいつ、幼子が苦手とか?
と言う割には、粟田口とかの短刀達にも人気だしなぁ。
主、鶴丸に明らかに避けられてるの、多分気づいてるよな。
察しのいい子だから。
「きよ」
「なに、どうしたの?」
パソコンを一度閉じて、主を抱き上げる。
「わたしってへん?」
「なんで、誰かに言われたの?」
「ううん。でも、みんなとちがうから、…ほいくえんのこも、ほんまるのみんなとも」
「…みんな、違うんだよ。同じだったら、それは機械と一緒。まぁ、機械も人間が作ってるから、多少は違うんだろうけどさ。
…だから、変じゃない。主と同じようにみんな、血が通ってて、息をして生きてる。みんな違って、みんなどこか同じなの」
「じゃあ、どうしてつるさんは、みんなとなかよしなのに、わたしといてくれないんだろう」
そう来たか…と、返答に困っていたら、また口を開いた主。
「つるさん、はなれたくないっていったのに、はなれてる。やくそくしたのに」
へぇ、隅に置けないな、鶴丸も。
「さんかんび、きてくれるかな」
「大丈夫、俺が引きずってでも連れてくるから」
「ほんと?」
「俺が嘘ついたことある?」
首を振った主を優しく撫でて、立ち上がる。
「本丸探検行こっか。鶴丸探しに行こ」
「いいの?」
時計を見ると、どの当番もそろそろ休憩時間に入るころで、ちょうどいいとタイミングだと見計らう。
「うん、今日はいつもより任務少ないしね。稽古も見にいく?今日は安定とまんばちゃんかな」
「いいの!?やったー!」
提案すると思ったよりも全然乗り気になってくれた、主。
「特別ね。じゃあ、しゅっぱーつ!」
まぁ、どうあっても、この本丸の奴ら主のこと大好きだし。