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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第10章 じゅう


 次から次へ湧いてくる敵に、辟易とする。
 奴らの狙いは歴史改変じゃなかったのか?
 どうしてうちに執着する?

 『鶴丸、…頼みがある』
 『集中しろ、舌を噛むぜっ…っ、くそ、切っても切っても湧いてきやがる』

 背中を任せた山姥切国広が、こんな場面で話しかけてくるとは思わなかった。

 『…主を頼みたい』
 『へ?』
 『初期刀として、アンタに』
 『驚きだな。どういう風の吹き回しだ?』

 目の前の敵を切り、ようやく振り向く。

 『主はアンタを好いていた。アンタもだろう?』
 『は?』
 『このタイミングで何を言っていると、思っているな。写しだからと侮るなよ』
 『侮ってはいないが、脈絡がないとは思っている』
 『感じ取れていた主の気配が薄くなっていると思わないか?』
 『…そうだな』
 『嫌な予感だ』
 『まぁ、あれだけ無差別に湧いてきていた敵も、苦無や短刀が多くなってきたところを見ると、敵の戦力がただ単に削がれてきたのか、それとも場所を定めたのかのどちらかだろうな。煩わしさは変わらないが』
 『分かっているのなら、ここは俺に任せてアンタが行くべきだ』
 『だが』
 『戦は大将首を取った方が勝ちだ。そうだろう?アンタは本丸の中でも練度が高い、万が一の場合も考えてアンタが行くべきだ』
 『俺が主に気持ちを寄せているのと、これは別件だぜ?初期刀こそ、こんな時にそばにいるべきではないのか?』
 『俺は主からずっと相談を受けていた。アンタへの気持ちを。…だから言っているんだ。
 あまり、言いたくはないが。…万が一この本丸が落とされた場合、主だって好きな男に看取られたいだろう、何もかも我慢してきたんだ。審神者と言う仕事に、幼い時から身を捧げて』
 『この本丸にその万が一があると?』
 『何もなければそれでいい、笑い話にでもなんでもすればいい。だが、』
 『…ったく、わかったよ。こう言う時の君は頑固だしな』

 血を払い、鞘に納める。

 『頼んだ』

 山姥切がそう言った瞬間、空が割れて敵の援軍が押し寄せる。

 『…っ!』
 『怯むな!…っ!いけ!!』
 『あぁ…分かってる!!』

 後ろ髪引かれるような気持ちがしながら、送り出してくれたアイツのためにも、駆け抜ける。

 『埒が開かないぜ…っ、』

 敵を切り伏せ続けながら、辿りついた君の部屋の前。

 
 
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