第9章 きゅう
「くそ妬けちゃうし、言いたくないけど、主の言葉だけがね」
「清光も枷になりたかったの?」
「馬鹿、違うでしょ。どう考えても、羨ましいのはがアイツに向けた気持ちの方」
清光の目が私を捉えて離さない。
清光の言葉や視線が、私を引き止める。
「大丈夫、誰も聞いてないから。…けど、鶴丸がさ、戻ってきたら。
戻ってきたら、教えてあげてもいいんじゃない?」
それでも、そんなの意味ないよ。
「…戻ってこなかったら?」
「その時は俺が貰ってあげるよ、主の気持ちも想いも受け止めた上でね」
弱気な私を包んでくれる清光の想いが、温かい。
「うん。…じゃあ、その時はよろしく」
清光が笑ったから、釣られて私も笑った。
「4日後、楽しみだね」
「うん」
鶴さんが帰って来たら、ちゃんと話そう。
夢のことも、みんな。
……そう思っていた。
ーーーー
ーー
「清光、鶴さんからの手紙は?」
「まだ、遅れてるみたい」
「そっか、仕方ないよね。出る前もシステムエラーがあったし」
「ほんと、政府の奴らどんな仕事してるんだか」
鶴さんがいなくなって、1日が過ぎ2日が過ぎ…。
待っていた手紙すら来なかった。
やっぱりほら、私が私のままだから、枷にすらならなかったのかもしれない。
「やっぱりおかしいよ、政府に問い合わせてみよう」
「……いい」
「主…」
「そのうち帰ってくるよ、…多分。だって、今日誕生日だもん。手紙はみっちゃんに期待してって、前に言われてるし。
書く時間なかったのかも」
今日は誕生日。
20回目の2月29日。
「決めた!今日は仕事休む。待ってる、いつ帰ってくるか分からないし」
「………わかった!明日仕事手伝うよ。俺も一緒に待つ。
それで帰って来たら一発殴る。手紙よこさなかった件も、今主にこんな顔させてることも気に食わないから、やっぱり二発かな」
清光が私の隣に腰掛ける。
何時になっても、ゲートは開かなかった。
「主、そろそろ宴…」
「あぁ、小夜ごめん。主今寝ちゃって、起こしてすぐいくから」
微睡のなかで、清光が小夜ちゃん言う。
私が寝ちゃったせいで誕生日の宴は、延期になり結局翌日に執り行われた。
2日も宴なんてと喜ぶ刀も居たけど、鶴さんは帰って来なかった。