第2章 に
「鶴さん、楽しんでるか??」
「あぁ、賑やかだな」
「あぁ。新しい刀が来るの久々だからさ」
先ほどまで、脇差や短刀とわちゃわちゃとしていた貞坊が、俺の隣に腰掛ける。
「そうなのかい?」
「おう!鶴さんと久々に会えて嬉しいぜ!」
「あぁ、俺もさ」
満足そうに笑った貞坊が、俺の盃に一杯注ぐ。
「こーら、貞ちゃん注ぎすぎ」
「釣れないこと言うなよ、今日は歓迎会なんだし。みっちゃんだって、鶴さんが来て喜んでたじゃん」
「それはそれ、これはこれ。鶴さんはまだ顕現してすぐなんだから、そんなペースで飲ませたら、限界すらわからないまま具合悪くなっちゃうかもしれないでしょ。
二日酔いで手入れはできないんだからね?」
「ちぇ、悪かったよ」
「太鼓鐘ーっ」
「あ、悪い呼ばれた!」
「もう!貞ちゃん話はまだ終わってないよ!」
「光坊、心配してくれてありがとうな。けど大丈夫だ、己の限界くらい見極められるさ、少し厠に行ってくる」
「え?大丈夫…ついていこうか??」
「燭台切〜っ、もう一本開けていいかい??」
「あー、もう、次郎さんってば。ごめん、伽羅ちゃん、ついて行ってあげて」
チっと、盛大に舌打ちをした伽羅坊。
そりゃそうか、一足早く寝てしまった火車切のもふもふを片手で撫でながら、もう片方で粟田口の狐を撫で、さらには五虎退の虎、それからこんのすけまで伽羅坊の隣を陣取っている。
随分馴れ合う個体らしいな、なんて言ったら嫌がるだろうな。
「俺は大丈夫だ、伽羅坊」
「廊下を出て突き当たりを右だ」
「あぁ、わかってる」
大広間を出て、障子を閉めると一変する。
賑やかさは一気になくなり、静かな夜を月明かりが演出していた。
庭に面した廊下は、ガラス張りの戸が一部、閉められている。
月と星が綺麗な夜だった。
天気は、審神者の力で影響をうけることもあると、昔何かで聞いた。
読んだのかもしれない。
だから、こんな穏やかな夜に安心する。
もの寂しさはあるが。
厠は伽羅坊の案内の通りで、迷わず行けた。
そのまま少し探索でもしようかと思った俺は、やはり少し酔ってるのかもしれない。
それぞれの部屋に、それぞれの名前が書いてある。
ここは粟田口、あっちには左文字。
基本的には、刀派事の部屋割りかと、1人納得する。