第11章 まゆみ
季節は秋から寒さを増す冬へと移り変わっていた。
千尋と関係を持ってから数週間が経っていた。
僕たちは恋人同士の様に振舞い始めた。
でも、未だに千尋は僕の事を“お兄ちゃん”と呼ぶのだ。
今朝もそうだった。
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃんじゃないだろう?拓海って呼べよ」
「だって、お兄ちゃんは、お兄ちゃんなんだもん。でもお兄ちゃんがそう言うなら拓海って呼ぶよ」
「拓海って呼んでくれよ」
「うん、分かった、拓海お兄ちゃん」
これを聞いて、暫くはダメだと僕は思った。
いきなり、兄を名前で呼ぶのは難しいだろう。
僕は気長に待つ事にした。
それよりも、まゆみの事が気になり始めた。
もう、千尋とこの様な関係になってしまったのだ。
まゆみとの関係は無理だと感じていた。
まゆみには申し訳ないがここは別れるしかなかった。
この話をいつしようかと僕は迷っていた。
今度の水曜日に僕は仕事を休みに入れていた。
その時に、まゆみに会って話そうと思っていた。
でも、上手く話せるだろうか。