第10章 千尋
口の中はちょっと鉄臭い味がした。
「お兄ちゃん…」
千尋がそう言ってくる。
僕は指の血を口の中で吸い上げた。
「ほら、血は止まったから後は絆創膏貼っておかない…」
そう言い終わらない時だったと思う。
いきなり千尋が僕の唇にまた自分の唇を重ねてきたのだ。
今度はしっかりと舌と舌を絡め合うキスだった。
僕は驚いてしまったけれど、身体は正直だった。
その千尋の舌を自分の舌に絡めて思い切り吸い上げてキスをした。
キスが終わるとお互いに見つめ合った。
「お兄ちゃん、私、ずっとお兄ちゃんの事が好きだったの…」
「え?だって千尋は妹だろ?」
「でも、好きなの…」
千尋の目はちょっと潤んでいた。
その潤んだ目を見ると僕はまた千尋にディープキスをした。
僕らは貪るようにキスを繰り返した。
千尋の口角からは唾液がしたたり落ちている。
僕はその唾液を指で拭うと千尋を抱きしめてこう言ったのだ。
「僕も、ずっと初めて会った時から好きだったよ…」
「うん…」
千尋も頷いた。
時計が10時になる事を告げるオルゴールのメロディ音が部屋に響いていた。