第2章 初対面
「拓海くん、お母さんの顔覚えてる?」
「いえ、覚えてないです…」
事実、僕は母の顔を覚えてはいなかった。
何しろまだ2歳児だったのだ。
覚えていなくて当たり前だろう。
聞くだけ野暮だと言える。
「こちらがお母さんの裕美さんよ」
叔母の寛子はそう言って母である人を紹介してくれた。
その女性の顔は小さく髪はライトブラウンで肩まであるボリュームのある髪型をしている。
服装はちょっと明るめのワンピースを着てカーディガンを羽織っていた。
「拓海、お母さんよ…」
母と名乗るその人からそう言われても即答できなかった。
僕はしどろもどろでこう答えた。
「お母さん…ですか?」
「そうよ、お母さんよ…」
これが正に23年ぶりに会う親子の会話なのだと思った。
僕は、別に感動とかは感じていなかった。
この人はどんな理由があったにせよ、1度僕を捨てて出ていった人なのだ。
それだけは間違いなかったが、恨む気にはなれなかった。
きっと夫婦には夫婦の理由があったのだろう。
そう思っていたのだ。
「お母さん…」
「拓海…」