第6章 妄想
飲み屋を出るとムッとした湿度の多い暑さを感じた。
僕と誠は駅まで一緒に歩いてゆく。
駅の改札を入り、そこで別れた。
別れ際に誠は手を上げながらこう言ってきた。
「拓海、そんなに悩むなよ」
誠はそう言ってくれた。
僕も軽く手を上げて答える。
「うん、分かったよ、今日はありがとな」
「気にするなって」
誠は背を向けて手を振っていた。
僕はそれを見ながら駅のホームへと向かった。
電車に揺られる事数分。
仲町台の駅に着いた。
マンションまで歩いてゆく。
マンションのエントランスを過ぎてエレベーターで2階まで上がった。
203号室のドアの鍵を開けた。
ドアを開けて部屋に入る。
千尋の姿は見当たらなかった。
すると、バスルームから声が聞こえてくる。
「お兄ちゃん?帰ってきたの?」
「うん、今帰って来たよ」
そう言うと千尋がバスルームからバスタオルを胸に巻き付けた姿で出てきた。