第3章 同居
沈丁花の香りが漂わなくなったころ、母の裕美と千尋は横浜にあるビジネスホテルへと宿泊先を変えていた。
やはり、両親である祖父と祖母が亡くなってからの実家暮らしは母の裕美には気を使う日々だったらしい。
ビジネスホテルならとても気楽に過ごせるだろう。
そんな時、裕美の夫のエディ・ブラウンが日本にやってきた。
どうやら先日千尋が言っていた「シアトルには帰りたくない」の話し合いに来たのだろう。
どうやって千尋を説得するのだろかと、僕は思っていた。
「パパ、私、シアトルには帰りたくないの…」
「何故だい?」
「お兄ちゃんと一緒に居たいの」
「そう言うことか…」
エディは年の頃は50歳くらいの白人男性だった。
日本人女性を妻にしていたからだろうか。
日本語は堪能だった。
エディの職業はシアトルにある某大手企業のシステムエンジニアだ。
休暇を取って可愛い娘の為に日本まで来たのだった。
「千尋はどうしたいんだい?」
「お兄ちゃんと一緒に暮らしたいわ」
「そう言う事なら何とかしよう」
「パパ、本当に?」
「あぁ、何とかするよ」