第2章 初対面
僕は寿司を食べながらその話を聞いていた。
千尋は僕と一緒に居たいって?
それは、どういう意味だろうかと思っていた。
千尋はもう成人していて大人の女性だ。
ひとり暮らししても誰も文句は言わないだろ。
それに、千尋が日本に住んでくれたら気軽に会えるではないか。
僕はそんな事を考えていた。
「一緒に拓海くんも飲まないかね?」
「え、僕ですか?」
「そうだよ、一緒に飲まないか?」
「はい、なら少しだけ頂きます」
正直、僕は余りお酒は強くなかった。
直ぐに酔っぱらってしまい寝てしまうのだ。
ただ、叔父の気持ち思うと断ることができなかったので飲むことにしたのだ。
叔父が僕のグラスにビールを注いでくれた。
「じゃ、再会に乾杯だな」
叔父は満面の笑みでそう言うとビールを美味しそうに飲んでいた。
僕も一口飲んでみた。
やはりビールは苦いのだとその時感じたのだ。
その後、僕と千尋は余り話をしなかった。
さっき千尋が言っていた「お兄ちゃんと一緒に居たいの」という言葉が、後に大変な事態をもたらすとはその時の僕は知らなかった。
庭からは相変わらず沈丁花の良い香りが漂っていた。