第1章 プロローグ
今日から禪院家に養子として迎えられることになった。養子と言っても、その意味するところはよくわかっている。彼らが私を望むのは、私の反転術式の力だという事を。
広間に足を踏み入れると、重々しい雰囲気が私を包んだ。禪院家の男性たちが私を取り囲み、その冷たい視線を一斉に浴びせてくる。女中は奥で立っており嫌な顔をしている。
「お前が桜潤か?」
変な風に髭を伸ばした酔っ払いの男が言葉を発した。その声には、私の存在を評価するような冷たさが含まれていた。
「はい。禪院桜潤と申します。」
彼らの意図は明白だ。私の反転術式の力を利用し、この家の力を更に強化すること。
「反転術式...興味深い力だな。」
男性たちが囁く声が耳に入る。彼らの目的は私を道具として利用し、その力を引き出すこと。しかし、その彼ら計画は早々に狂い始める。
「君が桜潤ちゃんか〜 待ってたで。俺の部屋おいでや桜潤ちゃん。」
突然、鋭い声が響いた。冷たい目で私を見つめていた。金髪でピアスをたくさんつけている変な人だなと思った。他の禪院家の男性は呆れ顔で文句を呟いていた。
「分かりました。」
私は静かに応じた。心の中では、この新しい生活がどれほど厳しいものになるのかを感じ取っていた。両親から禪院家の話は聞かされていたから。
彼は私の返事を聞くなり笑顔でそそくさと廊下の奥に行ってしまった。私は女中に荷物を持ってもらい彼の部屋へと案内してもらった。
彼の部屋へ向かう途中、廊下の影から一つの視線を感じた。遠くてあまりうまく見えなかったけど、黒髪で背の高い男性が立ってこちらをジッとみていた。
こうして、私は禪院家での新たな生活を始めることになった。