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逃避行

第2章 閉じ込められた生活


直哉くんの嫉妬は一瞬で、でも私の心や身体にに残る痛みはずっと消えない。「甚爾くんには関わらんといて」彼の言葉が頭の中で響いて、なんだか息が詰まるような気がする。「桜潤ちゃんは俺だけのもんなんやから」その言葉がいつも重くのしかかって、逃げ出したくなってしまった。


部屋でひとり、ぼんやりしていると、突然ドアがノックされた。誰だろう? 直哉くんがもう戻ってきたのかと一瞬怖くなったけれど、扉を開けると、そこには甚爾さんが立っていた。

「よう」

少し笑って、優しく話しかけてくる。

「また…来てくれたんですか?」

私は驚いたけど、どこかホッとしていた。甚爾さんは私の部屋に入って、ゆっくり周りを見渡していた。机に置いてある私の絵に目を留めると、近づいてじっと見ていた。

「これ桜潤が描いたのか?」

甚爾さんはそう言って、絵に目を細めた。

「はい…時間がたくさんあるから、絵を描くくらいしかやることなくて。」私は少し恥ずかしくて、小さく答えた。

「すごいじゃねーか。こんな綺麗な絵描けるなんて。」

甚爾さんは絵をじっと見たまま言った。

「閉じ込められてるのに、こんなに自由なものを描けるなんてさ。」

その言葉に胸が少し温かくなった。

「ここにずっといるの、正直辛いんです。外の世界を知らないまま、このままでいいのかって思う。」

私の声は小さく震えていた。でも、甚爾さんは頷いてくれた。

「桜潤、俺もう少ししたらここを出て行こうと思ってんだ。お前の書いたこの絵の場所も見に行って見てーしな。」

甚爾さんの視線がまっすぐ穴が空くほど私の顔に注がれた。

「だからその時はお前も連れて行こうか?こんなクソみてえな所で人生終わらせるなよ。」

よくわからなかった。彼の事をまだ十分に知らないし了承してしまったら直哉くんに何をされるのだろう、でも自由を求める強い彼は私の目に魅力的に映ってしまう。

「あ、あの…まだわからないです。直哉くんに…」

甚爾さんが少し顔を歪めて言った。

「別に今答えを出さなくていい。もっとお前の事を俺も知りたいしな。」

「はい甚爾さん…」

「なぁ、お前を見てると昔の俺を思い出すんだよ。だからお前が気になる。今度もっと聞かせてくれよ。じゃあな。」


甚爾さんは私に小さく笑い部屋から出ていってしまった。





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