第1章 ベッド
鮎川サチと大倉和樹が結婚してから3年が経っていた。
サチは44歳。和樹は40歳になっていた。
お互い40代になったとは言え実年齢には見えない二人だった。
二人は30代にくらいにしか見られなかったのだ。
良く、人間の愛情というものは3年しか続かないと言われているがサチと和樹には関係のない話だった。
二人はこの3年の間に愛情以外の概念をお互い持ち始めていたからだった。
その概念とは「尊敬」だった。
サチと和樹の間には愛情以外に尊敬があった。
お互いを尊敬しあい、お互いを大切に想っていた。
サチと和樹のこの3年間で子供はできなかった。
だが、結婚の全てが子供を持つ事ではないとサチも和樹も知っていた。
そこで、二人は犬を飼うことにしたのだ。
とても可愛い小さな赤毛のカニーヘンダックスだった。
二人には犬を飼う前からサチが飼っていた猫も2匹いた。
その猫たちは、サチがひとり暮らししている時からの付き合いだった。
この頃、夫の和樹は某大手外資系の会社に勤めていた。
サチは専業主婦をしていた。
二人が住むマンションは横浜市都筑区にある港北ニュータウンの一角にあった。
マンションの広さは3LDKだった。
大人二人と小型犬1匹と猫2匹が住むには丁度いい広さだった。
二人はお互いの自室を持っていた。