第1章 The only dear star【浮世 英寿/ギーツ】
「これ……」
違和感にはすぐに気づいた。右手の薬指に固い金属の感触に視線を移すと、赤い星の石を飾った銀色の指輪が嵌っている。
「必死なんだよ」
そう言って彼女の右手を引き寄せた英寿は、指輪に口づけを落とした。
「どうやったら、お前を一生 俺のものにしておけるかって」
「そんなの……」
わたしだって同じなのに……。
少しだけ目元を赤くした彼の表情には自信に溢れた笑みはなく、己の弱さを隠すように彼女から視線を逸らしている。そんな彼の表情に、彼女の胸は切なく音を立てた。
こんなに想われているのに、何を不安になっているのだろう。
トクトクと高鳴る心音に突き動かされるように、彼女は揺れる瞳を彼に向け、唇を開いた。
「……大好き」
何の脈絡もなく紡いだ言葉。それに一度 目を丸くした彼は、「知ってるよ」と言っていつもの自信に溢れた顔で笑った。
《 Fin... 》