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七十二候

第24章 土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)


 いつもながら熱と紫外線を感じて肌が痛い。そんな今日は一日中フルで活動していた。午前中に高校へレッスンをし、午後は中学校へレッスンをしに行く。そのまま秋田先生の自宅へ音楽コンクールのレッスンを受けに行き、夜は鈴川先生への元へ向かった。曲が作りたいという相談をしに。
 鈴川先生は私の家から徒歩で15分くらいの戸建て住んでいる。広い防音室を完備していて、売れっ子作曲家の裕福さを思い知る。

 50代の鈴川先生の奥様にしては若い。おそらく30代前半。そんな奥様が冷たいお茶を出してくれた。この人なら若いお嫁さんを貰えるんだろうな、と思った。かっこいいもの。
 私は「いただきます」と言い会釈した。
「雨宮さん、曲作りたいの?」
「はい、先生やAKIの作品を拝聴して作曲の素晴らしさを感じてはいたのですが、そのときは憧れにとどまっていて。ですが、私の大切な人とこれまでに歩んできた日々を思い出しているうちに、形に残したくなったんです」
「素敵だね。やってみるといいよ。何かコンセプトとかはあるの?」
「はい。四季を題材にしたいのですが……」


 自宅に戻り、整理をする。自分が演奏する曲でもあるため、メロディはクラリネットだ。伴奏はピアノ。これは近々まゆに紹介されるピアニストにお願いしよう。
 きっとAKIなら弦楽器や打楽器、ベースも入れる。だけど、私にはその技術はない。いつか、この曲をリサイタルでやるときが来たら、いろんな楽器を存分に入れて盛大に演奏したい。

 どんなキーにするのか、構成などもまったくこれから考えること。メロディが閃いたら筆を進めていきたいが、音楽コンクールも仕事もあるため、メロディを閃かせるために、これまでの徹との出来事や思い出、季節や感じたことなどをノートにまとめていくことにした。パソコンではなくアナログなやり方だが、これが自分には一番やりやすかった。
 四季折々を細かく描きたいが、今の私の技術ではきっと長い曲は作れない。なので7分程度に収められるようにしたい。
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