第1章 出会い
とはいえ、すぐに何か起こるわけでもなく。夏休みはあっという間に終わってしまった。どこの部活かも分からなかったし、少しチラチラと体育館は見てみても偶然か、運命か、全く姿は見当たらなかった。あんなに目立ちそうなのに。
「なーに、誰探してるの?言ってた人?」
『え?あぁうーん探してるんだけど……なんの部活か分からないんだよね……』
覗き込んでくる桜の顔はニヤニヤしている。からかうのが面白いのだろう。でも、もしかしたら桜なら知ってるかもしれない。不本意ではあるが、桜を頼るしかないのかもしれない……。
「それでそれでどんな人なのさ」
『あ、えっと、金髪のプリンの……カッコイイこ!名前は忘れちゃった……』
「知ってる情報少なくないねー。まぁでもね、多分あの人だなっていうのはあるよ。あっちの体育館だと思う。ほらっ、いくよ!」
『え、いいよ!私、そんな急に!無理むり無理!』
連れていかれたのは、ダンス部から1番離れた場所にある体育館だった。ここまで離れてたら見かけるはずもない。
「ねぇほら、あの人じゃない?」
真っ先に目に映ったのは、金髪の彼だった。
『かっこいい……』
「万人受けじゃないかもだけど、カッコイイとは思うよ」
『桜の意見は聞いてませーん』
そこにはだるそうな雰囲気のままバレーをしている姿が見えた。
『そりゃ運動部だとは思ってたけど。ここまでガチの運動部とは思わなかったカモ……?だるそうだね』
うちの学校はバレー部が強いと聞いたことはあるが、彼がまさかそのバレー部だとは思わなかった。
「で、どうすんの?このまんまだと誰かに取られちゃうかもよ!」
『付き合うとか考えたことないよ。それに私はここから見れるだけで十分』
「そんなこと言ってー。取られちゃったら見ることも出来ないかもなんだよ?」
たしかに。とは思う。私だって、彼氏が他の女の子にキャーキャー言われてたら嫌だなぁ、と。
「あれ?この前の子じゃん」
「黒尾先輩!」
一瞬で桜の顔が女になった気がした。
「どしたの?研磨でも見に来たの?」
「そうなんです!研磨くんがカッコイイってのあが言うから探しに来たんです!」
『ちょっと待ってよ!そんなベラベラ言うことじゃないでしょ!』
慌てて桜の口を塞ごうとするが、もう遅い。