第1章 出会い
『大丈夫ですか?』
そうやって細い金色の髪の毛に手を伸ばそうとすると、思っていた以上に、息が苦しそうだった。
これは大丈夫なやつなのだろうか。
『もしかして声、出ない感じですか?他の人、呼んだ方がいいですか?』
他の人を呼ぼうとして体育館の方に顔を向けると、強い力で腕を掴まれる。びっくりして、顔を元に戻すと苦しそうな顔がチラッと見える。
『綺麗……だな』
思わず出てしまった言葉だった。
『あっごめんなさい、大丈夫なら大丈夫です』
変なことを言ってしまって、その場を離れようとすると、初めて彼の声を聞く。
「ダンス部の東雲さんでしょ?」
『え、なんで、知ってるんですか?それより大丈夫ですか?』
突然、名前を呼ばれて驚いたが、それよりこの人の体調の方が心配で、でもやっぱり名前を知ってるのが不思議で。
キョロキョロしてると、同じジャージを着た人が心配そうにきた。
「おーい、何してんの?大丈夫そ?」
髪の毛のツンツンした、背の高い男子が心配そうに屈んでいる。
『あ、大丈夫そうなら……私……離れますね』
そっとその場を離れようとする。
「ありがとね。うちのが迷惑かけたわ。で、その格好ダンス部でしょ。研磨みたいにバテないようにちゃんと水分取りなさいね」
心の中でケンマというのが名前なんだと。しっかり覚えておくことにした。
『あ、じゃあ私はこれで……』
そっと逃げ出すように、というか逃げた。
さっきから心臓が高鳴っているせいかもしれない。とても綺麗だった。繊細な顔立ちというか、性格が顔に出ているというか。初めてな気がしなくて、どこかで会ったことがありそうだけど、一度出会っているならば、それこそあの顔を忘れるはずがないな、と。
『なんか、今日はいいことありそうだなぁ』
あっつい日差しの中で伸びをする。
「のあそろそろ休憩終わるよー!!!」
『うん、今行くねー!』
もしかして、恋なのか?とも考えるけれど、恋なんてしたことないから分からない。
『ねぇ、恋するってどんな感じ?』
「え、この短時間で何かあった?」
友だちの桜が驚いた顔で見上げてきた。
『ダンスに影響でるかな』
「マジで何があったの?」
『わかんない。でも、ドキドキする』
「えぇ!!!せんぱーい!!!東雲が恋してるみたいですー!!」